「甘くない砂糖の話」は糖質神話を打ち砕けるか?
糖質制限が最近の流行りである。
街を歩けばロカボや糖質制限の食べ物が続々登場し、テレビやインターネットでは糖分をカットすることの優位性が大いに語られている。もはや糖質制限は人口に膾炙していると言っても過言ではない。
・でも、本当に糖質をカットして変わるの?
・ご飯食べてるけどなんともないよ?
と懐疑的な人もいるだろう。そんな方々にある種の答えを提示するのがこの映画だ?
あらすじ
舞台はオーストラリア
成人男性(監督)がオーストラリア人の平均であるティースプーン40杯分の砂糖を含む食べ物を2ヶ月間食べ続けるとどうなるか ?
監督は日頃からケトジェニック生活を実践しており1日のカロリーのうち50%をアボカドや卵黄などの脂質から。30%を魚や卵白などのタンパク質から。残り20%野菜の炭水化物から摂取していると言う。実験では、なんとジャンクフードやスナックは一切摂取しない。ヨーグルト、スムージーなどいわゆる「健康的」な食事のみを摂り2ヶ月間生活する壮大な実験ドキュメンタリーだ。
感想と考察
初めて目にしたときは名作「スーパーマンサイズミー」を彷彿とさせた
スーパーサイズミーはハンバーガーを食べる実験だが、今回の「甘くない砂糖の話」はただの「健康的」な食べ物を食べ続ける実験である。ハンバーガーが体に悪いことは知っているが、ヨーグルトやスムージーが悪いかもしれないと気づく人は多くないだろう?
結果から言うと、監督は
体重は8.5kg増え
ウエストは10cm広くなった
もちろん監督はケトジェニック生活をしていたのでインスリン耐性が低下しており、体重が増えやすい体質だったのは事実だが、2ヶ月で8.5kgの増量は凄まじい。
い、いや、あれでしょ?カロリー過多になったんでしょう?という反論が聞こえるが、なんとカロリーは実験前後でほぼ同じ。さらに週三回の運動までしている。
一体何が起こっているのか?
まず、糖質(グルコースやフルクトース)を摂取すると、消化され体内に吸収される。
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血管を流れる糖質の内、グルコースは細胞内のエネルギーになったり、脂肪になって蓄えられたりする。
そして、フルクトースは血液中で脂肪になる。なぜならフルクトース(果糖)は古来貴重だからだ。貴重なエネルギー源なので体に蓄えようとするわけだ。
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面白いことに、血管のグルコースを細胞内に吸収しようとインスリンが働いてるとき、脂肪の代謝は行われない。つまり、血液中に浮かぶ脂肪はエネルギーとして使われず、体内に蓄えられてしまう。これが糖質を摂ると太るメカニズムだ。
つまり、糖質は本来体が溜め込みたい貴重なエネルギー源なので太るのは当然なのだ。果物をそのまま食べているような時代はそれでよかったが、今では人工的にジュースにして食物繊維を除いてわざわざ飲みやすくしたり(りんごは一個でティースプーン4杯分だ)異性化糖を大量に加えているので過剰摂取に陥りがちである。
また、血糖値の乱高下が気分の浮き沈みに関わるのは、低血糖の時はストレスホルモンが分泌されるからであるとか、オーストラリアで一番砂糖を摂取しているのは都会の住民ではなくアボリジニであり、かつてアボリジニは病気とは無縁の生活であったのに、今は病気で苦しむと言った事実が述べられている。
Diabetes in Aboriginal Australians - Wikipedia
アボリジニの糖尿病はWikipediaのページが作られるほど深刻である。
更に、食品会社は消費者が一番満足する「至福点」に達するまで飲み物に最大量の砂糖を加えている🙄🙄🙄など、糖質に関する闇は根深い。是非この映画をより多くの人が観て、糖質に対して考えて見て欲しい。
(尚、監督は実験の後元の脂質中心の生活に戻し、増えた体重を落とし、死んでいた肝機能も元通りにすることに成功している。良かった!)